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包括的なデジタルヘルスを実施するためのガイドライン(続き2)

ガイドラインの構成

 どんなデジタルヘルスソフトウェアソリューションも、以下のような成り立ち(層)を持っていることでしょう。

 

 アイデアやガイドライン等の要件(これを第1層とします)

 実現したいことを満足する機能の文書(これを第2層とします)

 前述の機能を満たす機能の技術文書(これを第3層とします)

 実際の機能( ウェブ、モバイルアプリ等)(これを第4層とします)

 対策や改善の仮説・検証をする機能(これを第5層とします)

 

 では、各層を掘り下げてみましょう。

第1層: ナラティブレイヤー

 第1層は、従来のガイドラインやガイダンスで構成する知識層で、いわゆるナラティブレイヤーです。デジタルトランスフォーメーションを実施するために、現在のガイドライン策定プロセスを合理化するアイデアを詳述します。第1層では、推奨事項を一意に識別して登録することの必要性を詳しく説明します。これらは、内容が現況に適切であるようにするために、必要に応じ随時更新します。これは、時間とともに改善される、収集されたエビデンスに基づいて行います。この層は、デジタルソリューションの原点です。

 

第2層: 運用レイヤー

 この層は運用レイヤーとなります。透明性のある一貫した運用を実現できるよう、要件を詳しく調べ、第1層の知識層を文書化します。このドキュメントは、ソフトウェアに依存せず、人間が読むことができるものとします。推奨事項、ユーザーシナリオ、意思決定支援ロジック、アルゴリズム、データセット、ワークフロー、ビジネスプロセスなどの要素を書出し、ソフトウェアやアプリを誰でも使いこなせる環境を作るための”材料の集まり”、いわゆるデジタルアダプテーションキット(通称DAK)としてまとめます。

 

第3層: 機械可読レイヤー

 この層は、任意のソフトウェアで利用可能でコンピュータが処理できる仕様の一揃いを構造化したものです。

これは、これらの仕様に沿ってガイドラインが意図するワークフローを運用できるソフトウエアを作成することが出来るものとします。

 

 これらの仕様は、最高の相互運用性標準に準拠し、ICD(国際疾病分類)やSNOMED(国際医療用語集)などの技術用語や医学用語を網羅します。また、HL7®(Health Level Seven) FHIR® (FAST HEALTHCARE INTEROPERABILITY RESOURCES)規格に準拠します。 

 

 これをより適切に説明するために、FHIR 仕様では、異なるコンピュータ システム間で医療情報がどのように交換されるかを定義しています。 これらのガイドラインにより、医療情報 (臨床データおよび管理データ) への必要性に基づくアクセスと利用が可能になります。 最終的に、これは透明性と一貫性の向上により患者に利益をもたらします。 

第4層: 実行可能レイヤー

 4 番目の層は、第3層の仕様を満足し、最初の標準となるソフトウェアです。このソフトウェアは仕様に定義された動作と機能要件を提供します。

 

 完全に機能するソフトウェアは出発点として機能し、様々な国や地域の多様な運用状況に合うように容易にローカライズすることができるようにします。

さらに、このレイヤーは第3層に記載されている仕様を使用しているため、データ表現はどこでも一貫しています。これは、ソフトウェアの相互運用性を高めることにつながります。

さらに、リファレンス ソフトウェアの構築に使用できるオープンソース ソフトウェア ライブラリが多数あります。

 その一例として、Google の FHIR SDK (ベータ版で利用可能) が挙げられます。これにより、便利な API を提供することで Android アプリケーションを簡単に作成できるようになります。もう 1 つの例は、JAVA ベースのアプリケーションで使用できる HAPI FHIR ライブラリです。

 

第5層:動的高精度の健康モデル

 最後の知識層では、ビッグデータ、動的アルゴリズム、および高度な分析を使用して、望ましい結果を達成します。

 第4層のデジタルシステムを導入して規模を拡大すると、国固有の、匿名化され、グローバルに収集され、正規化されたデータの作成が容易になります。

 さらに、AIと機械学習の応用により状況を把握できるようになります。アルゴリズムを母集団とその望ましい健康上の成果に合わせて最適化します。

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